コラム 岐阜

亀和田 俊明

【地方都市の魅力】岐阜県岐阜市 アクセス至便で生活・居住性の評価高い経済・ビジネス都市

コロナ禍で東京都の人口流出が続き、この5ヵ月で14722人の「転出超過」となっているものの、神奈川、埼玉、千葉が約5割を占め、首都圏の移動が中心です。3県に続く、大阪府、愛知県、北海道、福岡県、静岡県などで約2割、と地方への関心の高まりほど未だ実数は少なく、地方分散の動きはこれからといえます。地方への政令指定都市や中核都市について「移住と暮らし」という視点からさまざまな魅力と都市の実態をお伝えしてきていますが、今回は岐阜県「岐阜市」です。地方都市への移住を考える上で参考にしていただければと思います

中心市街地活性化で空間需要喚起し持続可能な街へ

岐阜市の市庁舎が5月に新築移転しますが、跡地活用について解体した後に広場などオープンスペースにするという方向性を示す基本構想案がまとまったといいます。本庁舎の活用にあたってのコンセプトは、「ひとびとの交流を交え、ひとびとが気軽に立ち寄り、憩う空間の形成」で、中心市街地の回遊性を高め、南庁舎は、起業支援やシェアオフィスなど人材育成の拠点にする意向です。今後、市民からのパブリックコメントを募り、年度内に構想を策定予定。

さて、岐阜市は全国のビジネスパーソンを対象に「快適な暮らし」や「生活の利便性」、「生活のインフラ」など8分野で調査した日経BP総合研究所がまとめた「住みよい街2020」で、都道府県庁所在地では23位でした。森記念財団都市戦略研究所が経済規模や文化度などを都市力として109都市を対象にした「日本の都市特性評価2020」でも23位で、特に経済・ビジネス分野では10位と高い評価を得、生活・居住分野で32位、交通・アクセス分野は38位でした。

岐阜市は日本のほぼ中央の岐阜県の南西部、濃尾平野の北端に位置し、木曽三川による扇状地系により形成されている人口約40万人の県庁所在地です。中央部には標高329mの金華山、山頂には岐阜城があるほか、長良川の清流は中央部を東西に貫流して山紫水明の美に恵まれています。愛知県をはじめ7つの県に囲まれる立地の良さから繊維産業やアパレルなど多くの企業も集まっており、有効求人倍率の高さや失業率の低さは全国トップクラスです。

市内には自然も多く残っており、長良川では川遊びが楽しめたり、野菜や果物といった農産物も豊富です。また、各地域につくられた300ヵ所以上の公園など子どもがのびのび遊べる環境は子育て世帯からの人気を集めています。一方、岐阜駅西地区には2つの超高層ビルが建設されているほか、2022年には高島屋の南側に35階建てビルが完成するなど、再開発事業も進められ、まちなか居住者が増えてきています。

【岐阜市の平均気温(1981~2010年)】9027_01.png (6 KB)(資料:気象庁資料を基に筆者作成)

岐阜県内には空港はありませんが、名鉄岐阜駅から約1時間の愛知県常滑市沖合の人工島には24時間運用可能な中部国際空港(セントレア)があります。日本航空や全日空だけでなくLCCも運航されているため、国内の主要都市や地方都市、アジアをはじめ中東やヨーロッパ、北米、オセアニア路線など旅行者やビジネス客など岐阜市民には利便性の高い空港として捉えられています。

【中部国際空港の乗降客数(2019年)】9027_02.png (8 KB)(資料:国土交通省資料より筆者作成)

名古屋までは電車で約20分、新幹線を使えば東京まで約2時間、大阪まで約1時間の距離です。市内の公共交通機関はJRと名古屋鉄道、路線バスがあります。恵まれた立地条件から東京、大阪、名古屋にアクセスしやすい環境です。都市部はBRTや地域内を運行するコミュニティバスなどが運行されて本数も多く、アクセス至便。岐阜市では公共交通の利便性向上に取り組んでいるほか、2020年には自動運転実証実験も行われました。

【岐阜市内各駅の1日平均の乗車人員の推移】9027_03.png (14 KB)(資料:国土交通省資料より筆者作成)

公示地価横ばいもアクセス良い岐阜駅近く住宅地上昇

3月に国土交通省から発表された岐阜県の公示地価は、商業地、住宅地いずれも下降が続き、住宅地は0.8%、商業地は0.3%、工業地を含めた全用途では0.6%の下落でした。岐阜市は商業地、住宅地ともに下表のように横ばい状態なものの、下降傾向でした。ただし、名古屋へのアクセスが良い岐阜市の主要駅に近い住宅地は伸びを続けています。最高価格地は14年連続でJR岐阜駅前の大岐阜ビルでした。

【2020年の公示地価の変動率】9027_04.png (6 KB)(資料:国土交通省資料より筆者作成) ※カッコ内は前年実績

買い物などはJR岐阜駅に「アクティブG」と「アスティ岐阜」という市民だけでなく観光客も利用する大型の複合商業施設があるほか、駅の北側には商業の核となる柳ケ瀬商店街があります。同商店街では、毎月第3日曜に手作りや手仕事などクラフト関連の定期市「サンデービルヂングマーケット」が開催され、県内外から約160の出店者が集うとか。なお、郊外には子ども連れでも行きやすい大型のショッピングセンターも充実。

また、岐阜市の事業所数は約2万2千、従業員数は約19万人ですが、全国の市町村ランキングで事業所数は30位、従業員数は36位、東海圏では4番目。第2次産業が12%、第3次産業が88%を占める産業構造で、産業別の市内総生産(2017年)では、「不動産業」の15.2%を筆頭に「卸売・小売業」の13.8%、「保健衛生・社会事業」の10.7%、「金融・保険業」の7.8%、「製造業」の6.5%と続き、「製造業」では食料品が16.4%で最も多い状況です。

【岐阜市の事業所数・従業員数】9027_05.png (5 KB)(資料:「平成28年経済センサス」より筆者作成)

岐阜市では市政運営にSDGsの考え方を取り入れるとともに、SDGs達成に向けた取り組みを推進していくことが重要であると考えていますが、持続可能な岐阜市の実現に向けて令和2年度においては、特に重点を置いて取り組む政策の方向性として下表の「こどもファースト」、「観光振興」、「中心市街地活性化&都市基盤整備」、「都市内分権推進」、「寄り添う福祉&市民の健幸づくり」の5つの「政策ベクトル」に加え、「広域連携」や「シティプロモーション」、「災害に対する備え」にも引き続き取り組んでいくといいます。

【5つの政策ベクトル】9027_06.png (37 KB)(資料:「令和2年度岐阜市当初予算(案)」を基に筆者作成)

なお、同市は2007年に1期目となる「中心市街地活性化基本計画」を策定しており、2017年には国土交通省の「コンパクト・プラス・ネットワーク」のモデル都市に選定され、市街地再開発事業を進めています。そして、基幹バス路線沿線への居住誘導、ビッグデータや地域住民の意見を反映させた生産性の高い持続可能な地域公共交通の再構築、さらにまちなかへ出かける仕掛けづくりに取り組んでいます。

9027_07.png (242 KB)「将来都市構造図」(出典:「岐阜市中心市街地活性化基本計画」より)

幼児教育や環境づくりなど子どもファーストのまち

岐阜市は2005年以降、転出超過の傾向でしたが、下表のように2019年は524人の転入超過となりました。同市は市外からの移住サポートにも力を入れており、子育てや住まい、医療等、移住者にとって気になる情報などコンテンツも充実している岐阜の魅力発信サイト「エエトコタント岐阜市」で発信しているほか、県が運営する「清流の国ぎふ 移住・交流センター」には移住定住コンシェルジュが在籍し、電話やメールでの相談も受け付けています。

【岐阜市の転入者数・転出者数・転入超過数の推移】(人)9027_08.png (16 KB)(資料:総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」を基に筆者作成)

なお、進学時に市外に転居した若者が初めての就職を機に市内に定住すると5万円が支給される「Uターン支援」が行われます。まちなか居住重点区域に自身が住むための住宅を新築・購入する2人以上の世帯に対し、建設・購入費の一部が助成(子育て世帯・市外からの転入など要件により助成額が異なる)されるほか、定住するために空き家を購入し、改修する場合には対工事費用の2分1(居住用部分に限る。上限あり)が補助されるなどの事業も。

岐阜市では子育て世帯が安心して暮らせるような環境づくりの支援を行っていますが、市内3ヵ所にある母子健康包括支援センターでは、専任の職員により妊娠・出産・子育てに関する幅広い相談に応じているほか、「ぎふし子育て応援アプリ」では子育て支援に関する情報をはじめ、市内の育児支援施設やイベント等の情報を入手できます。また、幼児教育施設だけでなく、小学校や研究機関などオール岐阜の体制で幼児期の子どもの成長を支えています。

【岐阜市「子育て安心プラン実施計画」】9027_09.png (13 KB)(資料:厚生労働省資料より筆者作成)

県内の女性の就労支援を行う「男女共同参画・女性の活躍支援センター」では、キャリアカウンセラーがマンツーマンで支援してくれる「併走型サポート」を行っており、育児休業からの復帰や就業に関する不安の解消に共に取り組んでいます。そのほか、女性採用に積極的な企業情報や働く女性のインタビュー、イベント情報などは、岐阜県で働く女性を応援するポータルサイト「ぎふジョ!」で紹介されています。

【岐阜市内の生活情報】9027_10.png (8 KB)(資料:岐阜市HPより筆者作成)

人口10万人当たりの病院数・病床数・医師数が全て全国平均を上回って東海圏ではトップの医療環境といいます。地区の中核の救命救急センターとしては岐阜大学医学部附属病院、岐阜県総合医療センターがあるほか、2018年度に全国初の取り組みとして始まったドクターカー事業、さらにドクターヘリは岐阜大学医学部附属病院を基地病院に1機運航されているなど救急医療のモデルになりつつあるともいわれています。

昨今、名古屋中心部へのアクセスの良さなどから不動産・住宅サイトの調査では、「借りて住みたい街」で1位、「買って住みたい街」では6位と「岐阜人気」が定着しています。まちなか居住を推進する岐阜市ですが、高層ビルばかりでなく、柳ヶ瀬商店街などでのリノベーションを活用した新たな商業担い手の創出など注目される事業も展開中です。そして、充実した都市機能を持ちながら自然と歴史がバランス良く共存する街で、未来を担う子どもたちを第一に考えた子育て・教育、安心できる生活環境に暮らしやすい住環境など岐阜市は地方都市への移住を考える上で有力な候補地の一つといえるのではないでしょうか。

(「Glocal Mission Times」掲載記事より転載 )