コラム 長野

GLOCAL MISSION Times 編集部

【地方都市の魅力】長野県長野市 豊富な自然に恵まれながら、充実した交通網を有する街

新型コロナウィルスの感染拡大は、人々の暮らしや働き方に対する価値観を大きく変えました。テレワークやオンライン会議を導入する企業が増えたことで、住居を地方都市へ移す選択肢が加わり、移住を考える人が増えています。今回は、移住希望地ランキングで常に上位にランクインする長野県の県庁所在地、長野市にスポットを当ててご紹介します。

移住希望地域ランキングでは3年連続1位の長野

長野市を抱える長野県は、NPO法人「ふるさと回帰支援センター」が毎年発表する、「移住希望地域ランキング」で2017年から201820193年連続1位を獲得。30代から60代の幅広い年代で根強い人気を誇っています。

県庁所在地である長野市は行政機関が集まる県の中心地です。善行寺の門前町として発展し、現在、それぞれに趣のある32地区に分かれ、そのうち13地区は自然豊かな中山間地域となっています。

県庁の本庁舎は、標高362m地点にあり「日本で最も標高が高い県庁所在地」として知られています。「飯縄山」や「妻女山」や「犀川」など、豊富な自然に恵まれ、天然の観光資源を多く有しており、中心街を離れると田園風景が広がり、南部には松代藩の城下町の名残を感じさせる町並みが続きます。また、北部にはスキー場が整備され、長野市の別の表情を見せます。

長野市の人口は令和291日時点、約38万人。盆地に位置していることから、夏は暑く冬は寒く、四季がはっきりしている気候が特徴です。寒暖差は激しいものの、山脈に囲まれる地形から、湿度は低めで、朝夕は爽やかな風が吹き、暑い夏でも比較的過ごしやすい地域です。長野市の1981年から2010年までの平均気温は下表のように11.9度で、2019年は12.9度と少し上昇しています。

8936_01.jpg (34 KB)(資料:気象庁資料を基に筆者作成)

また、長野市は降水量が日本で最も少ない都道府県庁所在地で、年間900~950mm程度しか雨が降りません。台風の影響が少なく、冬は雪が積もる日もありますが、除雪対策が整っていることから、交通に影響はほとんどありません。自然災害が少なく、安心して生活できるのが長野市です。

東京まで90分。首都圏へ足を運びやすいちょうどの距離感

県庁所在地・中核市である長野駅は、首都圏への抜群の交通網を有しており、都心への往来も苦になりません。長野駅から東京駅までは、北陸新幹線により約90分。長野インターチェンジから練馬インターチェンジまでは、上信越自動車道により約2時間40分で移動可能です。名古屋までは、3時間、新大阪までは4時間、金沢へは北陸新幹線で約1時間となっています。交通網が整備されており、首都圏に容易に足を運べる利便性の高い市といえるでしょう。

自然を満喫しながらも、首都圏へアクセスしやすい、ちょうどの距離感が人気の理由のひとつなのです。

8936_02.jpg (31 KB)(東日本旅客鉄道株式会社資料を基に筆者作成)

公共交通の鉄道はJR、長野電鉄などのほか、アルピコ交通株式会社の路線バスがあります。長野市中心地街は、中央通りと昭和通りを境に4つの交通セルに分割し、循環バス「ぐるりん号」およびミニバスを運行させて往来を活発化させる「交通セル」を導入しています。対象地域内は、自動車交通の流入が抑えられており、バスや徒歩、自転車などで移動しやすい環境です。

新型コロナウィルス感染拡大における経済対策

長野市の新型コロナウィルス感染状況は、2020107日現在、64例目が確認されましたが、数字的には落ち着きを見せています。

同市では、この感染症拡大の影響で落ち込んだ経済への対策として、総額48億円の「ながのビッグプレミアム商品券」の発行を行います。購入は202011月からの予定で、1人あたり5万円を上限に、プレミアム率50%の商品券を購入できます。使用期間は、令和212月から令和3228日まで。この過去最大規模のプレミアム商品券施策により、市内経済の活性化が期待されます。

また、令和3310日までに、長野市に会社(本社・支店)へ移転する、県外の法人を対象に、移転支援金として300万円、移住する社員1人につき、上限5人に50万円を支給するとしています。また、6人以上で移住すれば、社員1人につき10万円を支給。施設改修費の同市の補助金制度併用が可能です。このように、長野市は市内への企業誘致にも積極的に取り組んでいます。

さらに、ユニークな取り組みとして、学生応援パック給付事業が挙げられます。新型コロナウィルス感染の影響でアルバイトが縮小し、外出の自粛を強いられた親元を離れて暮らす学生を対象に、自粛への協力と感謝を込めて、長野市特産品と長野市産米、マスクをセットで送ります。長野市出身で県外に暮らす、または、県外から長野市の大学や大学院などの通う学生が対象になるということです。

市民の幸せの実現を目指す取り組み

令和2319日の国土交通省の官報公示によると、長野市の公示地価は、住宅地の平均公示地価は53,300/㎡で変動率は-0.4%、商業地で113,500/㎡で変動率は0.4%、全用途では72,000/㎡で変動率-0.1%でした。長野市の事業所数は約19千、従業員数は約18万人で、全国の市町村ランキングで事業所数は34位、従業員数では39位、付加価値額では39位の規模を誇ります。

同市の産業を見ると、卸売業、小売業の売上金額が1.8億円で、全体の41.8%を占めます。次いで医療、福祉事業が1.1億円で全体の25.9%です。都市近郊型農業として、野菜や果物などの農業も盛んですが、都市化や高齢化の影響で販売農家は減少傾向にあります。

長野市では、平成29年度に「第五次長野市総合計画」を令和8年までの10年間を期間として策定・実施しています。「市民の『幸せ』の実現」「持続可能なまちづくりの推進』」「『長野市らしさ』の発揮と『まちの活力と魅力』の創出」を基本方針として、街の将来像に「幸せ実感都市『ながの』」を掲げています。この長期構想に基づき、人口減少や少子高齢化などの従来にはない変化に的確に対応し、継続的な発展を目指しています。

移住者支援に積極的に邁進 Nターンのすすめ”

令和元年の長野市の転入者数は前年よりも、155人増え転入率は0.6%増加している一方で、転出者数は54人減少しています。しかしながら、同市では、2014年から転出者数が転入者数を上回る傾向が続いています。年齢別にみると、社会人数年後の時期にあたる25~29歳、60代以降についてはいずれも転入超過となっています。

8936_03.jpg (48 KB)(長野市HPより筆者作成)

長野市では、移住者に対する支援に精力的です。移住については、人口増推進課内に「移住・定住相談デスク」を設置し、専門の相談員2名が中心となって応対しています。また情報サイト「長野市移住手帖 Nターンのすすめ」では、長野市の仕事・住まい・子育て・立地・交通・気候などの情報を発信しています。NターンのNとは、「Nagano」の「N」を意味します。また、同市では、移住者支援のための施策「長野市空き家バンク」を実施しています。空き家バンクでは、空き家を売りたい方、貸したい方がサイトに登録することで、利用希望者に情報を提供する仕組みです。県外移住者を対象に空き家バンクで登録されている物件は、物件の改修費用や家財道具等処分費用の一部が補助されます。

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、長野県への移住に関心を持つ人が増えたのか、空き家バンクのアクセス数は増加傾向にあるとのことです。長野市では、子育てしやすい街を目指し、保護者が子育ての情報交換や交流を気軽にできる施設「地域子育て支援センター」を市内16か所で展開。施設では、専門のスタッフや看護師に子育ての相談も可能です。

待機児童対策にも注力しており、20184月の待機児童数は、長野市では0人でした。20194月には11人に増加したものの、2019年より待機児童を解消するため、保育士確保および保育コーディネーターによる支援に取り組み、20204月には1歳児が2人にまで減少。同市は、引き続き、待機児童解消を目指す取り組みが継続していくとしています。また、長野市では「おひさま広場」と称して、市内の幼稚園や保育園が保育室や園庭を解放し、様々な遊びや行事を行うなどの取り組みも実施しています。同市では、0~15歳到達後の331日まで福祉医療制度が適応されます。福祉医療費需給証書を提示することで原則、県内の医療機関では受給者負担金の上限は1か月あたり500円です。

森ビルの森記念財団都市戦略研究所が20209月に発表した「日本の都市特性評価2020」では、対象となった109都市中、長野市は19位でした。長野市は、文化・交流で19位、生活・居住で15位と上位でしたが、研究・開発についての評価については50位未満でした。長野市では、移住ポータルサイトを通じて移住セミナー・ツアー・相談会、仕事、住まいなどの情報発信を積極的に行っており、移住支援の取り組みで大きな成果を挙げています。市内の芋井地区には田舎暮らしの体験施設ヤングブルー村があり、「自然をたのしみ、里山で暮らす」をテーマに無料で利用可能となっています。その他、長野市やその周辺市では様々な移住体験会を開催しています。

文化を大切にしながら、雄大な自然環境に囲まれた長野市。それでいながら、適度な都会生活が送れる街です。地方都市への移住先として、魅力的な候補地といえるでしょう。

(「Glocal Mission Times」掲載記事より転載 )