コラム 長野

島田 浩美

移住ランキングで人気がある長野県の中核都市、長野市暮らしのリアルなメリット・デメリット

地方転職や移住を考えたとき、地名は知っていても暮らしぶりはどうなのか、なかなかイメージしづらいですよね。実際、都市の規模によって暮らしの様子や利便性などもさまざまです。今回は、中枢中核都市の一つである長野県をご紹介します。

日本アルプスをはじめとする山々に抱かれた豊かな自然、健康長寿を育む食文化、首都圏からのほどよい距離感。そんな理由から、雑誌『田舎暮らしの本(宝島社)』の「移住したい都道府県」ランキングで2020年まで14年連続1位に輝いた長野県。地方暮らしや I・J・Uターンをサポートする「ふるさと回帰支援センター」でのアンケートでも、2017年・18・19年と3年連続でトップとなっています。 では、実際のところはどうなのでしょう。長野県の県庁所在地である長野市での暮らしの本音のメリット・デメリットとは?

1.自然が近く、アクティビティが身近!

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長野県といえば、外せないのが恵まれた大自然。長野市街地から30分も車を走らせれば、緑豊かなエリアに到着できます。楽しめるアウトドア・アクティビティも、登山やキャンプ、サイクリング、マウンテンバイク、釣り、湖でのカヌーやSUP、冬はスキーやスノーボード、ワカサギ釣りなど幅広く、いずれの拠点へアクセスしやすいのも魅力。日本の屋根とよばれ、古くから登山やウィンタースポーツのメッカとされる北アルプス(白馬)方面にも1時間で行ける一方、海なし県とはいえ、日本海へも1時間ちょっとでたどり着けます。早朝にアクティビティを楽しんでから出勤する“エクストリーム出社”をする人や、仕事帰りにスキー場のナイターゲレンデに行く人もいるほどです。
また、移住者からよく聞かれる声が「四季がはっきりしている」ということ。長野に移住して四季の変化を知った、なんて人もいます。夏は暑いとはいえ湿気が少なくカラッとした暑さで、夜は涼しく熱帯夜はほぼ皆無。昼夜の寒暖差が激しく、それによって味の濃いおいしい農作物も育まれています。ちなみに、野菜作りをしている人も多く、近所に畑をもっている人がいたら、新鮮でおいしい野菜をもらえる機会も多々。特に特産のりんごは「買ったことがない」なんて人も多数います。

2.満員電車がなく、通勤時間も短い!

「満員電車で通勤するストレスから解放されたい…」。そんな理由で移住を考える人も少なくないのでは。長野市は郊外を中心にマイカー通勤可能な企業も少なくないので、電車を利用する人自体が多くありません。長野県庁や市役所をはじめとする官公庁の職員は公共交通機関の利用を推奨されていたり、中心市街地の企業は社員用の駐車場が完備されていないことから通勤に電車を利用する人もいますが、学生利用も多いものの、すし詰め状態は無縁。また、マイカー通勤の場合は、朝の通勤時間帯に渋滞はあっても都会ほどの混雑も人混みもありませんし、車中では音楽やラジオを聴いたりと快適に過ごせます。
ちなみに、通勤手段については、長野市中心部にある広告代理店のデータによると、社員の通勤手段は、電車利用20%、バス利用14%、マイカー通勤25%、自転車10%、徒歩29%、その他2%という結果に。また、通勤時間は、15分以内が39%、30分以内が34%と、多くの社員が通勤時間30分以内でした。

3.新幹線利用により、他都市へのアクセス楽々!

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新幹線を利用すれば、東京までは1時間半。都会と長野のデュアルワークも可能です。また、北陸方面も近く、富山までは最短約50分、金沢までも1時間ちょっとで到着できます。ちなみに、長野県第2の都市で県中部の中心地である松本市までは、電車でも車でも1時間ほど。県土が広い長野県は、地域によって歴史や文化が全く異なるため、県内を移動するだけでさまざまな文化が楽しめます。

4.家賃相場が安く、夢のマイホームも!

移住のはじめの一歩は物件探しから…と考えている人も多いのでは。全国宅地建物取引業協会連合会の情報によると、家賃は、東京都世田谷区の相場価格が1LDKで11.47万円、3LDKで26.28万円なのに対し、長野市は1LDKで4.86万、3LDKで7.32万円と格安です(2020年3月15日時点)。駐車場代が賃貸に含まれているところも多くあります。ちなみに松本市は1LDKで5.51万、3LDKで10.20万円と長野市よりやや高め。これは7割以上を県外出身者が占める信州大学の中心キャンパスが松本市にあり、長野市に比べて学生が多いことも影響していると思われます。
土地代も、全国平均の坪単価が48万6819円/坪、世田谷区が235万5019円/坪なのに対し、長野市は19万7463円/坪とかなり安いことがわかります(株式会社Land Price Japan調べ、2019年)。建築費の相場は全国平均と変わらないものの、賃貸とさほど変わらない住宅ローンでマイホームが持ちやすく、趣味の空間を作ったり、ペットを飼ったりと夢が膨らみます。

5.温泉が身近で、水もおいしい!

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温泉地数が日本で2番目に多く、日帰り入浴施設の数は日本一という長野県。長野市内にも趣の異なる温泉がいくつもあり、早朝から深夜まで営業しているところもあるので、気軽に温泉が楽しめます。隣接する市町村にも温泉が豊富にあるので、手軽に温泉巡りができ、温泉好きにはたまりません。
また、水源が多い長野市は水道水もおいしく、長野市川中島地域の地下からくみ上げた水道原水のペットボトルもあるほど。おいしい県営水道水のPR事業などに活用されています。

【長野暮らしのリアルなデメリット5つ】
実際に長野市に憧れて移住してみたものの、都会とのギャップに戸惑うこともあります。そこで、デメリットもまとめました。

1.冬が寒く、雪も降る

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「冬、寒いのは当然でしょ?」と思ったら大間違い。長野市の冬はハンパなく寒いのです。冬期は最低気温が氷点下の冬日が続き、氷点下10度に達する日もしばしば。最高気温が氷点下のままという真冬日も少なくありません。雪深いことで知られる東北の日本海側や新潟県からの移住者でも「長野市に来て、初めて氷柱を見た」なんて人も。
また、昔より少なくなったとはいえ、雪もよく降ります。出勤前の雪かきは日常茶飯事。結構な運動量になります。ただ、雪は降るものの気温が低いため、サラサラの粉雪が多く、雪かきは比較的しやすいうえ、スキー場では極上のパウダースノーが楽しめます。そして、雪景色の美しいこと! 長野県の中部や南部地域の晴天率の高さには劣りますが、日本海側に比べると冬晴れの日が多いのも特徴です。

2.自家用車がないと不便なのにガソリン代が高い

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自動車を持たずに生活している人もいますが、郊外型大型店舗を利用したり、アウトドア・アクティビティや温泉を楽しむ場合はマイカーがあったほうが圧倒的に便利です。ところが、ガソリン代が高いのが難点。都道府県平均ガソリン価格比較サイト「gogo.gs」によると、レギュラーガソリンの全国平均が143.5円/Lなのに対し、長野県は149.4円/Lで、なんと全国43位の高値(2020年3月時点)。長野市と県内の他市町村に大差はなく、長野県が全体的に高いようです。市場の価格競争が弱く、内陸にあるため輸送コストがかかってしまうことが理由の模様。
ちなみに、自動車は寒冷地仕様のオプションを付けるのがおすすめです。移住者のなかには「寒冷地用バッテリーではなく出勤時にエンジンがかからなかった」という人も。ほかに、スタッドレスタイヤの購入など、自動車も冬用対策が必要です。

3.年収相場が低い

都道府県別「賃金構造基本統計調査、2018年」によると、東京都の年収相場は全国1位、長野県は26位。とはいえ、東京と比べるとどこの地方も相場が下がるため、全国的に中位にランクしている長野県は悪くはありませんし、年収は下がるものの、家賃相場や農産物の手に入れやすさなどを踏まえると、それほどデメリットといえないかもしれません。
また、働き方に関しては、ITの発達によりリモートワークも注目されているので、都会での仕事を継続しやすいですし、最近は地方において後継者がいない店舗や職人技などを継ぐ事業継承なども興味を集めており、地方で働くスタイルも多様化しているため、収入先も広がっています。

4.地域コミュニティへの参加が負担になるかも…

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長野市中心部のマンション・アパート暮らしの場合は該当しないことも多いようですが、都市部に比べると少なからず会合や地域のイベントなど濃密な近所付き合いが増えるため、人見知りの人や仕事が忙しい人は負担になるかも。とくに山間エリアになるほど、男性は消防団や地域の祭りの参加が求められがちで、飲み会の機会も多いので、お酒を飲めない人はキツイかもしれません。ただ、参加により仲良くなりやすく、距離感も縮まります。

5.都会のような文化的な楽しみは限定的

コンサートの開催や上映映画の本数、美術館の展示などは、どうしても都市部に比べて少なく、都会的な文化がある暮らしに慣れている人は物足りないかもしれません。とはいえ、ゼロではなく、先述の繁華街・権堂周辺には本格的なシネマコンプレックスがあるほか、単館系の独自セレクトが人気の国内最古級の木造映画館があり、監督や俳優の舞台挨拶も多く行われています。また、ファッション関係のショッピングスポットは長野駅前を中心に、デパートやファッションビルもあります。
コンサートなどの開催は、長野駅からアクセスのよい県最大規模の多目的ホール「長野県県民文化会館(ホクト文化ホール)」や2016年に開館した「長野市芸術館」のほか、長野冬季五輪の競技施設跡地を活用したビッグハット」、「エムウェーブ」などで行われています。
さらに美術館・博物館に関しては、長野県が全国1位の数を誇るほど実はたくさんあるのです。ただ、専門分野に特化した施設が多いので、ジャンルに偏りが見られます。ちなみに、総合美術館である県立の長野県信濃美術館本館は2021年春の再開をめざして改修中。隣接する東山魁夷館は2019年10月にリニューアルしました。

まとめ
結局、長野市でも都会でも、暮らし方は自分次第。これから人生を送るうえで何を優先したいかが重要なポイントになるでしょう。移住や転職を考えている方は、この記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。

(「Glocal Mission Times」掲載記事より転載 )