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GLOCAL MISSION Times 編集部

【地方移住の手引き】子育てと教育で考える。地方移住するということ

NPO法人ふるさと回帰支援センターが発表した「2019年の移住相談の傾向、ならびに移住希望地域ランキング」によると、20~30歳代の地方移住に関する相談が2年連続で全体の5割を超えているそうです。

地方移住というと、もうそろそろリタイヤを考えているシニア層が老後の静かな生活を求めてするもの、というイメージが強いかもしれません。働き盛りで子育て真っ最中の20~30歳代が、なぜ地方移住を考えるのか?子育てと教育という観点から、地方移住について考えてみましょう。

都市部で子育てをする理由

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都市部で生活をする20~30歳代の若い世代は、どのような理由で都会での子育てを行っているのでしょう?日本政府が2018年にまとめた「東京都在住者の今後の暮らしに関する意向調査」(調査対象は東京都在住の18~69歳までの男女1,200人)によると、東京都での暮らしやすさとして、交通の便がよい点(82.8%)、買い物などの日常生活が便利な点(71.5%)が高いポイントとなった一方、街路樹や公園の整備が行き届いている点(15.4%)、教育環境がよい点(12.6%)、子育てがしやすい環境である点(9.0%)などはあまり高いポイントにはなっていません。

この結果を見ると、20~30歳代の若い世代は通勤や生活の利便性に魅力を感じて都市部で生活をしているものの、子育てや教育の環境については都市部で暮らすことを利点として感じていないようにも見えます。

参考URL:東京都在住者の今後の暮らしに関する意向調査
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/pdf/kongono_kurashi_ikotyosa.pdf

子育てがしやすい環境とは?

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東京都では9.0%にしかならなかった、子育てがしやすい環境。では子育てや教育がしやすい環境とは、どのような環境をいうのでしょうか?

一般的に子育てや教育によい条件とは、「地域の安全性」、「教育・医療施設の充実」、「近隣のコミュニティ」、「自治体などの子育てサポート」などが高い水準で満たされていること、加えて親にとっても住みやすい環境であることだといわれています。

一般社団法人 移住・交流推進機構(JOIN)が2018年にまとめた「若者の移住調査」(調査対象者は20~30歳代の既婚男女で地方への移住に興味がある500人)の中で、「あなたが仮に移住先で子育てをするとして、移住先の子育て環境について、重視する条件を教えてください」(複数回答)と質問した結果は以下のようになりました。

・現在と比べて犯罪が少ない・治安がよいを含む安全関連(67.8%)
・自然とのふれあい(43.0%)
・地域のコミュニティなどのお付き合い関連(39.0%)
・学力・知力の向上ができる教育環境(26.8%)
・子どもが楽しめる施設・公園(25.2%)


この結果から、都市部から地方への移住を考えている20~30歳代の若い世代は、主に安全性や自然とのふれあいの観点で、現在の都市部での生活が子育てや教育にとってよい環境ではないと考えているともいえそうです。

参考URL:若者の移住調査
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/souda_chihou/h30-03-20-siryou4-5.pdf

子育て・教育を考えて地方移住する

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実際に地方移住したときには子育てや教育に関して、どのようなメリットが考えられるでしょうか?

豊かな自然環境の中で安全に子育てができる

豊かな自然環境の中で生活できることは、親にとっても子どもにとっても、地方移住の一番のメリットでしょう。他にも交通量の少なさから来る交通安全や、近隣との深い繋がりは不審者防止にも効果があります。

物価の安さ

地域によって差はありますが、都市部と地方には物価の水準に違いがあります。たとえば、全国平均の物価水準を100としたときに、東京都は104.7、最も低い宮崎県は96です。

また一番顕著なのは住居に関わる物価水準で、東京都は鳥取県の1.62倍にもなります。このような日々の生活に関わるコストの違いは生活の豊かさに通じ、子育てにおいては教育資金の充実にもつながるでしょう。

待機児童の少なさ

地方では人口密度の低さから、保育園や学童保育の定員には余裕があります。待機期間なく保育園や学童に入園できる可能性が高く、待機児童は少ない傾向です。夫婦共働きの場合には、ここも地方移住のメリットです。

子育て支援

人口が少なく税収も少ない地方では、自治体が移住者を歓迎しています。特に子育てに対しては、サポートの厚い自治体が多いのが特徴です。
・中学卒業まで医療費全額助成、通学定期の半額補助(北海道壮瞥町)
・1人目5万円、2人目20万円、3人目100万円の出産祝い金支給(北海道福島町)
・中学生までの子どもに1人10kgの子育て支援米を支給、給食費の米・麺・パン代を町が負担(北海道南幌町)
この他にも各地方自治体では、子育てに関してその地方ならではのさまざまな支援を行っています。

まとめ

子育てに関してとてもメリットの多い地方移住ですが、親にとってもメリットが多く魅力的です。地方への移住を妨げている大きな要因として真っ先に挙がる「収入」や「仕事(働き口)」に関しても、テレワークなどの普及によって働き方改革が進んでいます。数年前に比べてハードルの下がった地方移住。そろそろ真剣に考えてみてはいかがですか?

(「Glocal Mission Times」掲載記事より転載 )