コラム 全国

木下 斉

アシモト経済下支え、オンライン市場獲得に向けて動こう 〜今、地方創生に関わる事業者が果たすべき役割とは〜

この5年ほどの地方創生政策に絡んで立ち上がった組織は全国各地にあると思います。今、コロナウイルス対策のための自粛政策によって、日本経済も大きな影響を受けています。地域経済に目を向けても、既に飲食店などのサービス産業全般に深刻な影響が出ており、地域活性化の前にまずはアシモト経済の下支えが必要となっています。

新サービス、新規制緩和、制度支援と現場をブリッジしよう

ネットなどのサービス活用は地域の企業やお店それぞれでは対応しきれないものが多数あります。一方で、クラウドファンディングサービスなどでは支援サービスが次々と立ち上がっており、地域のまちづくり会社などはこれらの新サービスと、アシモト経済のお店の方々とをサポートしてつなげていく事業が今求められています。

例えば、キャンプファイヤー社では、「新型コロナウイルスサポートプログラム(https://camp-fire.jp/channels/covid-19-support)」と銘打って、サービス手数料を無償化し、決済手数料のみで資金調達などの支援を行っています。イベント中止、飲食店、宿泊施設などによる資金集めなどに活用することをサポートし、個別プロジェクトをみれば公共による営業保証などの支援を上回る資金を集めているケースもあります。

さらに、規制緩和も続々と出ています。飲食店で所有していた酒を小売することが解禁されたり、タクシーでの食事配達などの貨物輸送なども解禁されたりと、今までは規制されていたものが可能になっています。各種行政機関との調整も必要になるこれら規制緩和についても、サポートすべき業務が多数存在しています。

また次々に国、都道府県、市町村などで立ち上がる支援メニューについても複雑を極めてきています。これらに関する情報発信や申請手続きなどについても自治体、会議所など含めた地域組織と連携して対応していく必要があるでしょう。

もし、自前事業で普段利益をあげられているようであれば、その利益から独自の地域支援事業を立ち上げることも可能です。私も関わる愛知県春日井市勝川でのプロジェクトでは、地元でのリノベーションや再開発などを行なってきた不動産関係者で基金を出し合い、地元向けの応援商品券の配布を各店舗に行い、お客さんへ配布いただくようにしていたりします。日々稼ぐことができていれば、いざというときの対応も可能になります。そのための稼ぎであり、蓄えでもあるわけです。

日本経済は内需が6割を占める

とはいえ、日本において新型コロナ対策は様々なカタチで行われていますが、過剰に悲観的になりすぎるのも問題があると思っています。そして、悲観的になって次の時代に向けた動きを止めるというのは、地域活性化においては極めて問題です。他が止まっているときこそ、オンラインなどでも次の打ち手に向けて対策を取り、オンラインでできる新たな市場に向けた取り組みにも乗り出すことで、未来の成長を作り出すことが可能になります。人類の歴史をみれば、克服できないということはないのです。

さらに、日本は相対的に恵まれています。発展途上にある国などでは、内需はそれほど大きくなく、輸出産業であったり、はたまた国境を超えて先進国に働きに出ている親族の仕送りなどで生計を立てている人たちも多くいます。国が国債を発行しようとも与信力はなく、独自の強い基軸通貨を持っているわけでもなかったりするのです。日本はそれらの条件と比較すれば、日本経済自体が6割が内需、つまりは我々が日々の生活を通して国内で消費している経済活動によって生み出されているため、国境などの規制がかけられ続けても、国内での一定の沈静化が見られれば回復は行いやすいわけなのです。さらに関係者の方々の努力によって、物流などが滞りなく動き続けることが可能となり、さらにインターネットというインフラによる人々の活動で経済が一定担保されていれば、回復可能性を過剰に悲観的に見る必要はないと思っています。戦争や地震などによって社会資本そのものが破壊されているわけではないのです。

何より地方創生に向き合う事業は、もとから困難なことと向き合うしかないものなのです。様々な情報に左右され、悲観的になって、感傷的になったり、攻撃的になったり、落ち込んでしまっている場合ではないのです。我々なりに地域の事業者、住む人々に向けてできる限りのことで働きかける必要があります。私は地元の経済をどうにかして守り、かつ猛烈に成長しているオンライン市場に対応していくチャンスに変えることが、今、地域に関わる会社の役割だと思います。

今こそ、地域に貢献してこそ未来がある

未来における地域での取り組みの信用というものは、こういう危機におけるサポートなどの実績によって形成されます。事業面だけでなく、経営者たちが抱える精神的ストレスも極めて大きくなっています。経営者のメンタル面での支援ということにも目を向けるべきでしょう。なかなか地域の中で集まることもできず、一人下がり続ける業績と苦しい資金繰りで精神的に参ってしまう経営者も出てきます。そういう人たちに寄り添うことも今必要なことです。

地方創生に求められるのは、ふわっとした良いことなどではなく、こういう危機を皆で乗り越えるための事業、政策、サポートを提案し、実践するという積み重ねにほかなりません。ぜひとも、地域の仲間と共に、困難を乗り越え、次の地域のあり方をいち早く作っていく。そういう今の動きが、未来を決めるのです。

(「Glocal Mission Times」掲載記事より転載 )